ビヨントラ錠400mg

添付文書情報2025年05月改定(第3版)
商品情報
- 禁忌
- 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者。
- 効能・効果
- トランスサイレチン型心アミロイドーシス<野生型>及びトランスサイレチン型心アミロイドーシス<変異型>。
(効能又は効果に関連する注意)
5.1. 本剤の適用にあたっては、最新のガイドライン等を参照し、トランスサイレチンアミロイドーシスの診断が確定していることを確認すること。
5.2. 本剤は、トランスサイレチン型心アミロイドーシスによる心不全を有する患者に使用し、また、「臨床成績」の項の内容を熟知し、臨床試験の選択基準等を十分理解した上で、適応患者の選択を行うこと〔17.1.1、17.1.2参照〕。
5.3. NYHA心機能分類3度の患者では、NYHA心機能分類1・2度の患者より相対的に本剤の有効性が低い可能性があるので、本剤の作用機序、及び臨床試験で示唆されたNYHA心機能分類と有効性の関係を十分に理解し、患者の状態を考慮した上で、本剤投与の要否を判断すること〔17.1.1参照〕。
5.4. NYHA心機能分類4度の患者における有効性及び安全性は確立していない。
5.5. 肝移植後の患者における有効性及び安全性は確立していない。
- 用法・用量
- 通常、成人にはアコラミジス塩酸塩として1回800mgを1日2回経口投与する。
- 肝機能障害患者
- 8.1. 本剤の投与開始初期に、eGFR低下することがあることから、腎機能を定期的に検査すること。腎機能障害のある患者では経過を十分に観察し、腎機能障害悪化に注意すること〔9.2.1参照〕。
9.2.1. 重度腎機能障害患者又は末期腎不全患者:投与の必要性を慎重に判断すること(本剤投与によりeGFRが低下することがあり、腎機能が悪化するおそれがある)、eGFRが15mL/min/1.73㎡未満の患者は、臨床試験では除外されている〔8.1参照〕。
9.3.1. 中等度肝機能障害又は重度肝機能障害患者:本剤は主に胆汁中に排泄されるため、血中濃度が上昇するおそれがある(AST、ALT又は総ビリルビンが基準値上限の3倍を超える患者は、臨床試験では除外されている)。
- 副作用
- 次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
- 11.2. その他の副作用
1). 胃腸障害:(1%以上2%未満)悪心、(0.5%以上1%未満)下痢、腹部不快感、上腹部痛。
2). 臨床検査:(0.5%以上1%未満)血中クレアチニン増加。
- 授乳婦
- 妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること(本剤は胎盤を通過する可能性があり、ラットを用いた胚・胎仔発生試験では、胎仔体重低値が認められている(胎仔の体重の低値が認められなかった用量でのAUCに基づく曝露量は、臨床用量での曝露量の15倍)。また、ラットを用
いた出生前及び出生後の発生に関する試験では、出生仔離乳前までの体重低値に加え、出生仔学習障害が認められている(出生仔における無毒性量での母動物のAUCに基づく曝露量は、臨床用量での曝露量の15倍))〔9.6授乳婦の項参照〕。
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること(動物実験(ラット)の結果から、本剤は乳汁中に移行する可能性がある)〔9.5妊婦の項参照〕。
- 小児等
- 小児等を対象とした臨床試験は実施していない。
- 適用上の注意
- 14.1. 薬剤交付時の注意PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること(PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することがある)。
16.1 血中濃度
16.1.1 単回投与
日本人健康成人9例に本剤400mg注)及び800mgを絶食下で単回経口投与したときのアコラミジスの血漿中濃度推移及び薬物動態パラメータは次のとおりであった。
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注)本剤の承認された用法及び用量は、1回800mgを1日2回経口投与である。
16.1.2 反復投与
健康成人6例に本剤800mgを絶食下で1日2回12日間経口投与したときのアコラミジスの血漿中濃度は、投与10日目までに定常状態に達し、Cmaxに基づく累積係数は1.3~1.6であった(外国人データ)。
日本人の野生型又は変異型のトランスサイレチン型心アミロイドーシス患者に本剤800mgを1日2回経口投与したときの定常状態における薬物動態パラメータの母集団薬物動態解析に基づく推定値は次のとおりであった。
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16.2 吸収
16.2.1 食事の影響
健康成人17例に本剤800mgを空腹時又は高脂肪食摂取後に単回経口投与したとき、食事によりアコラミジスのCmaxは約22%低下したが、AUC0-infは食事の影響を受けなかった(外国人データ)。
16.3 分布
アコラミジスのヒト血漿タンパク結合率は96.3%~96.5%であった(in vitroデータ)。
16.4 代謝
アコラミジスはUGT1A1、UGT1A4、UGT1A9及びUGT2B7でグルクロン酸抱合体に代謝された(in vitroデータ)。
健康成人6例に本剤の14C標識体800mgを単回経口投与したとき、アコラミジスは主にグルクロン酸抱合による代謝で消失した。ヒト血漿中総放射能の約63.1%が未変化体、約7.6%がグルクロン酸抱合体であった(外国人データ)。
16.5 排泄
健康成人6例に本剤の14C標識体800mgを単回経口投与したとき、投与後216時間までの糞中及び尿中に投与量のそれぞれ約34%及び約68%が排泄された。未変化体の尿中排泄率は投与量の10%以下であった(外国人データ)。
16.6 特定の背景を有する患者
16.6.1 腎機能障害
健康成人及びATTR‐CM患者330例(日本人33例)を対象とした母集団薬物動態解析の結果、腎機能(クレアチニンクリアランス:25.9~190mL/min、eGFR:25.4~157mL/min/1.73m2)はアコラミジスの見かけのクリアランスに影響を及ぼさなかった。
16.6.2 高齢者
健康成人及びATTR‐CM患者330例(日本人33例)を対象とした母集団薬物動態解析の結果、年齢(18~89歳)はアコラミジスの見かけのクリアランス及び分布容積に影響を及ぼさなかった。
16.7 薬物相互作用
16.7.1 In vitro試験
アコラミジスはCYP2C8及びCYP2C9に対する阻害作用を示し、KI値はそれぞれ39μmol/L及び210μmol/L、kinact値はそれぞれ0.033/min及び0.049/minであった。アコラミジスはOATP1B1に対する阻害作用を示し、IC50値は55.5μmol/Lであった。
16.7.2 その他の薬剤
(1)アデホビル
健康成人14例に本剤800mgを1日2回8日間反復経口投与し、本剤の投与7日目にアデホビル(OAT1基質)10mgを単回投与したとき、アデホビル単独投与時と比較して、アデホビルのCmaxは8%減少、AUC0-infは19%増加した(外国人データ)。
(2)オセルタミビル
健康成人18例に本剤800mgを1日2回9日間反復経口投与し、本剤の投与7日目にオセルタミビル(OAT3基質)75mgを単回投与したとき、オセルタミビル単独投与時と比較して、オセルタミビルカルボン酸のCmaxは7%減少、AUC0-infは4%増加した(外国人データ)。
17.1 有効性及び安全性に関する試験
17.1.1 海外第III相試験(AG10‐301)
野生型又は変異型のトランスサイレチン型心アミロイドーシス患者注)632例(プラセボ群211例、本剤群421例)を対象とした30ヵ月間の二重盲検プラセボ対照試験*1を実施した。本剤の用法・用量は800mg1日2回とした。このうち、ベースライン時のeGFRが30mL/min/1.73m2以上の患者611例(プラセボ群202例、本剤群409例)が有効性の主要な解析対象集団とされた。
投与開始12ヵ月後以降はタファミジスメグルミン又はタファミジスを併用可能とされ、併用割合はプラセボ群22.8%(46例)、本剤群14.9%(61例)であった。
Part Bの主要評価項目である「投与開始30ヵ月後までの死因を問わない死亡割合、心血管事象に関連する入院頻度、脳性ナトリウム利尿ペプチド前駆体N端フラグメント(NT‐proBNP)のベースラインからの変化量、及び6分間歩行距離のベースラインからの変化量から構成される階層的複合エンドポイント」について、本剤群でプラセボ群と比べて統計学的に有意な差が認められた(p<0.0001(有意水準4%(両側)*2)、Finkelstein‐Schoenfeld法)。主要評価項目の構成要素別の結果を次表に示す。
表 投与開始30ヵ月後までの主要評価項目の構成要素別の結果(mITT)
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また、投与開始30ヵ月後までの死因を問わない死亡割合及び心血管事象に関連する入院頻度のNYHA心機能分類(I/IIとIII)別の部分集団解析の結果、死因を問わない死亡割合(発現例数)はNYHA心機能分類I/II度の集団でプラセボ群24.3%(42/173例)、本剤群17.4%(59/339例)(ハザード比[95%信頼区間]*3:0.695[0.466、1.036])、NYHA心機能分類III度の集団でプラセボ群34.5%(10/29例)、本剤群28.6%(20/70例)(ハザード比[95%信頼区間]*3:1.145[0.515、2.546])、生存例における心血管事象に関連する入院頻度(発現例数/対象例数)は、NYHA心機能分類I/II度の集団でプラセボ群0.31回/年(47/131例)、本剤群0.12回/年(55/280例)、NYHA心機能分類III度の集団でプラセボ群0.18回/年(3/19例)、本剤群0.21回/年(13/50例)、全症例における心血管事象に関連する入院頻度(発現例数/対象例数)は、NYHA心機能分類I/II度の集団でプラセボ群0.51回/年(74/173例)、本剤群0.25回/年(87/339例)、NYHA心機能分類III度の集団でプラセボ群0.75回/年(12/29例)、本剤群0.47回/年(22/70例)であった。
副作用発現頻度は本剤群で11.9%(50/421例)、プラセボ群で5.2%(11/211例)であった。本剤群の主な副作用として、悪心[本剤群1.4%(6/421例)、プラセボ群0.5%(1/211例)、以下同順]、下痢[1.0%(4/421例)、0%]、発疹[1.0%(4/421例)、0.5%(1/211例)]が認められた。[5.2、5.3参照]
*1:二重盲検投与期間のうち投与開始から12ヵ月間がPart A、二重盲検投与期間全体がPart Bとされ、早期承認申請を目的とし検討したPart Aの主要評価項目(6分間歩行距離のベースラインから投与開始12ヵ月後までの変化量)について、プラセボ群と本剤群で統計学的に有意な差は認められなかった。
*2:試験全体の第一種の過誤確率を制御するためにPart Bの主要評価項目の解析に用いる有意水準を4%(両側)とした。
*3:投与群、ベースライン時の6分間歩行距離、ベースライン時のNYHA心機能分類(I/II度/III度)、ベースラインのNYHA心機能分類とベースライン時の6分間歩行距離の交互作用を因子として、病型(野生型/変異型)、スクリーニング時のNT‐proBNP(3000pg/mL以下/超)、スクリーニング時のeGFR(45mL/min/1.73m2未満/以上)を層とした層別Cox比例ハザードモデル
17.1.2 国内第III相試験(ALXN2060‐TAC‐302)
日本人の野生型又は変異型のトランスサイレチン型心アミロイドーシス患者注)(25例)を対象とした30ヵ月間の非盲検非対照試験を実施した。本剤の用法・用量は800mg1日2回とした。主要評価項目である「投与開始30ヵ月後までの死因を問わない死亡割合及び心血管事象に関連する入院頻度」について、死亡は認められず、心血管事象に関連する入院頻度(発現例数/対象例数)は0.1329回/年(5/25例)であった。
副作用の発現頻度は12.0%(3/25例)であり、主な副作用として腎機能障害が8.0%(2/25例)、便秘、薬疹が4.0%(1/25例)に認められた。[5.2参照]
注)主な選択基準は次のとおりであった。
・次のいずれかの検査及び遺伝子検査により、野生型又は変異型のトランスサイレチン型心アミロイドーシスと確定診断された患者:
a)心内膜心筋生検で、アミロイドタイピング(免疫組織染色法、質量分析法又は免疫電子顕微鏡法)によりTTRアミロイド沈着が確認されている
b)99mTc‐ピロリン酸又は99mTc‐ビスホスホネートシンチグラフィ(DPD又はHMDP)により陽性像が確認され、かつ血清及び尿免疫固定法、並びに血清免疫グロブリン遊離軽鎖測定に基づきALアミロイドーシスが除外されている*4
(*4:ALXN2060‐TAC‐302試験のみ、心臓以外の生検(腹壁脂肪等)によるTTRアミロイド沈着の確認も必要)
・NYHA心機能分類I~III度で、次のいずれかの心不全の病歴を有する患者:
a)心不全による入院歴を有する
b)心不全による入院歴はないが、容量負荷や心内圧上昇の徴候・症状による心不全の臨床的エビデンス(頚静脈圧上昇、息切れ、X線検査又は聴診での肺うっ血の徴候、末梢浮腫等)を有する
c)利尿薬による治療を必要とした又は継続的に必要とする心不全の症状を有する
・スクリーニング前10年以内に受けた経胸壁心エコー図検査又は心臓MRIによる左室壁(心室中隔又は左室後壁)の厚さが12mm以上である患者
18.1 作用機序
アコラミジスはTTRの4量体における2つのサイロキシン結合部位に選択的に結合することにより、疾患抑制性のT119M変異型TTRと同様の立体構造にシフトすることで4量体を安定化させ、その単量体への解離を抑制し、新たなTTRアミロイド形成の律速段階を抑制する。
18.1.1 精製TTRへの結合
(1)蛍光偏光法、等温滴定熱量測定法、表面プラズモン共鳴法、マイクロスケール熱泳動法、サブユニット交換法によるin vitro試験において、本剤はTTRに対して結合親和性を示した。
(2)表面プラズモン共鳴法によるin vitro試験において、本剤はTTRに速やかに結合と緩やかな遊離を示した。
(3)線維形成法によるin vitro試験において、本剤は野生型TTR及びV122I変異型TTRを安定化した。
18.1.2 血清TTRへの結合
(1)12種の固有のTTR変異を含む54例の被験者血清を用いた蛍光プローブ排除法による評価で、本剤は検討されたすべての変異型TTR及び対照に用いた野生型TTRに対し、90%超のTTR結合率を示した。
(2)18種の固有のTTR変異を含む64例の被験者血漿TTRを用いたウエスタンブロット法による評価で、本剤は検討されたほとんどの変異型TTR及び対照に用いた野生型TTRに対し、90%超のTTR安定化率を示した。
18.1.3 TTR結合時の立体構造
結晶構造による解析で、本剤は野生型TTR及びV122I変異型TTRに結合すると、Ser117側鎖への相互作用により、疾患抑制性のT119M変異型TTRと同様の立体構造にシフトすることが示された。
- 一包可:不可
- 分割:不可
- 粉砕:不明
- 製造販売会社
- アレクシオンファーマ
- 販売会社
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