タルセバ錠150mg

添付文書情報2024年11月改定(第5版)
商品情報
- 習
- 処
- 生
- 特生
- 特承
- 毒
- 劇
- 麻
- 覚
- 覚原
- 向
- 警告
- 1.1. 本剤は、緊急時に十分に対応できる医療施設において、がん化学療法に十分な知識・経験を持つ医師のもとで、電子添文を参照して、適切と判断される症例についてのみ投与すること。また、治療開始に先立ち、患者又はその家族に本剤の有効性及び危険性(特に、間質性肺疾患の初期症状、服用中の注意事項、死亡に至った症例があること等に関する情報)、非小細胞肺癌の治療法等十分説明し、同意を得て投与すること〔8.1参照〕。
1.2. 本剤の投与により間質性肺疾患があらわれることがあるので、初期症状(息切れ、呼吸困難、咳嗽、発熱等)の確認及び胸部X線検査の実施等、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。また、国内臨床試験において、間質性肺疾患により死亡に至った症例があることから、治療初期は入院又はそれに準ずる管理の下で、間質性肺疾患等の重篤な副作用発現に関する観察を十分に行うこと〔8.3、9.1.1、11.1.1、15.1.1参照〕。
- 禁忌
- 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者。
- 効能・効果
- 1). 切除不能な再発・進行性でがん化学療法施行後に増悪した非小細胞肺癌。
2). EGFR遺伝子変異陽性切除不能再発・進行性がん化学療法未治療非小細胞肺癌。
(効能又は効果に関連する注意)
5.1. 術後補助化学療法として本剤を使用した場合の有効性及び安全性は確立していない。
5.2. EGFR遺伝子変異陽性の切除不能な再発・進行性でがん化学療法未治療の非小細胞肺癌の場合には、臨床試験に組み入れられた患者の遺伝子変異の種類等について、「17.臨床成績」の項の内容を熟知し、本剤の有効性及び安全性を十分に理解した上で、適応患者の選択を行うこと。
- 用法・用量
- 通常、成人にはエルロチニブとして150mgを食事の1時間以上前又は食後2時間以降に1日1回経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する。
(用法及び用量に関連する注意)
7.1. 副作用の発現により用量を変更する場合には、50mgずつ減量すること。
7.2. 高脂肪・高カロリー食の後に本剤を投与した場合、AUCが増加するとの報告がある。食事の影響を避けるため食事の1時間前から食後2時間までの間の服用は避けること〔16.2.2参照〕。
7.3. 他の抗悪性腫瘍剤と併用する場合は、「17.臨床成績」及び「15.1臨床使用に基づく情報」の項の内容を熟知し、選択すること〔15.1.2、17.1.3参照〕。
- 生殖能を有する者
- 8.1. 本剤を投与するにあたっては、本剤の副作用について患者に十分に説明すること〔1.1参照〕。
8.2. 本剤の投与により、間質性肺疾患、発疹、下痢、角膜穿孔、角膜潰瘍等の副作用があらわれることがあるので、これらの発現又は症状の増悪が疑われた場合には、速やかに医療機関を受診するよう患者を指導すること。
8.3. 本剤の投与により間質性肺疾患があらわれることがあるので、初期症状(息切れ、呼吸困難、咳嗽、発熱等の有無)を十分に観察し、胸部X線検査を行い、また、必要に応じて胸部CT検査、動脈血酸素分圧(PaO2)、動脈血酸素飽和度(SpO2)、肺胞気動脈血酸素分圧較差(A-aDO2)、肺拡散能力(DLCO)等の検査を行うこと〔1.2、9.1.1、11.1.1、15.1.1参照〕。
8.4. 本剤の投与により重篤な肝機能障害があらわれることがあるので、患者の状態に応じて本剤投与中は定期的に肝機能検査を実施することが望ましい〔9.3肝機能障害患者の項、11.1.2参照〕。
8.5. 重度の皮膚障害があらわれることがあるので、必要に応じて皮膚科を受診するよう患者に指導すること〔11.1.5参照〕。
9.1.1. 間質性肺疾患、肺感染症等のある患者又はその既往歴のある患者:間質性肺疾患等が増悪し、死亡に至る可能性がある〔1.2、8.3、11.1.1、15.1.1参照〕。
9.1.2. 消化管潰瘍、腸管憩室のある患者又はその既往歴のある患者:消化管穿孔があらわれることがある〔11.1.7、15.1.3参照〕。
肝機能障害患者:肝機能障害が増悪することがある〔8.4、11.1.2参照〕(エルロチニブの血中濃度が上昇する可能性がある)。
妊娠する可能性のある女性:妊娠する可能性のある女性には、本剤投与中及び最終投与後2週間において避妊する必要性及び適切な避妊法について説明すること〔9.5妊婦の項参照〕。
- 相互作用
- エルロチニブは、肝チトクロームP450(主にCYP3A4、CYP1A2)によって代謝される。また、in vitro試験においてUDP-グルクロノシルトランスフェラーゼ(UGT)1A1の阻害が認められたため、消失過程で主にUGT1A1によるグルクロン酸抱合を受ける薬物との相互作用の可能性がある〔15.2.1、16.4参照〕。
10.2. 併用注意:1). CYP3A4阻害剤(ケトコナゾール、イトラコナゾール、クラリスロマイシン、テリスロマイシン、インジナビル、ネルフィナビル、リトナビル、サキナビル等)、グレープフルーツジュース[ケトコナゾールと本剤を併用すると、エルロチニブのAUC<中央値>が86%・Cmax<中央値>が69%上昇した(CYP3A4阻害剤との併用
により、エルロチニブの代謝が阻害され血漿中濃度が増加する可能性がある)]。
2). CYP3A4誘導剤(リファンピシン、フェニトイン、カルバマゼピン、フェノバルビタール、セイヨウオトギリソウ<セント・ジョーンズ・ワート>含有食品等)[リファンピシンと本剤を併用すると、エルロチニブのAUC<中央値>が69%低下した(CYP3A4誘導剤等との併用により、エルロチニブの代謝が亢進し血漿中濃度が低下する可能性がある)]。
3). 塩酸シプロフロキサシン[塩酸シプロフロキサシンと本剤を併用すると、エルロチニブのAUC<幾何平均値>が39%上昇、エルロチニブのCmax<幾何平均値>が17%上昇した(CYP1A2及びCYP3A4を阻害する薬剤との併用により、エルロチニブの代謝が阻害され血漿中濃度が増加する可能性がある)]。
4). プロトンポンプ阻害剤(オメプラゾール等)[オメプラゾールと本剤を併用すると、エルロチニブのAUC<幾何平均値>が46%低下した(持続的な胃内pHの上昇により、本剤の溶解度が低下し吸収が低下する可能性がある)]。
5). H2受容体拮抗剤(ラニチジン等)[ラニチジンと本剤を併用すると、エルロチニブのAUC<幾何平均値>が33%低下した(胃内pHの上昇により、本剤の溶解度が低下し吸収が低下する可能性がある)]。
6). 抗凝血薬(ワルファリン等)[INR増加や胃腸出血等があらわれたとの報告があるので、本剤とワルファリンを併用中の患者では、定期的に血液凝固能検査(プロトロンビン時間又はINR等)を行うこと(機序不明)]。
7). タバコ(喫煙)[喫煙によりエルロチニブのAUC<平均値>が64%低下した(喫煙によるCYP1A2の誘導により、エルロチニブの代謝が亢進し血漿中濃度が低下する可能性がある)]。
- 副作用
- 次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
- 重大な副作用
- 11.1. 重大な副作用*11.1.1. 間質性肺疾患(4.4%):間質性肺疾患(間質性肺炎、肺臓炎、放射線性肺臓炎、器質化肺炎、肺線維症、急性呼吸窮迫症候群、肺浸潤、胞隔炎等)があらわれることがあり、死亡に至った症例も報告されているので、異常が認められた場合には本剤の投与を中止し、ステロイド治療等の適切な処置を行うこと〔1.2、8.3、9.1.1、15.1.1参照〕。
11.1.2. 肝炎(0.1%未満)、肝不全(0.1%未満)、肝機能障害(1.6%):ALT上昇、AST上昇、ビリルビン上昇等を伴う重篤な肝機能障害があらわれることがあり、肝炎、肝不全により死亡に至った症例も報告されている〔8.4、9.3肝機能障害患者の項参照〕。
11.1.3. 重度の下痢(1.1%):重度下痢、悪心、嘔吐、食欲不振により脱水症状をきたし、腎不全に至った症例が報告されているので、必要に応じて電解質や腎機能検査を行い、患者状態により止瀉薬(ロペラミド等)の投与、補液等の適切な処置を行うとともに、本剤の減量又は休薬を考慮すること。
11.1.4. 急性腎障害(0.1%未満):急性腎障害等の重篤な腎機能障害があらわれることがある。
11.1.5. 重度の皮膚障害:ざ瘡様皮疹等の発疹(6.3%)、爪囲炎等の爪障害(0.8%)、皮膚乾燥・皮膚亀裂(0.3%)、皮膚潰瘍(0.2%)、皮膚そう痒症(0.1%)等があらわれることがあり、また、重度皮膚障害発現後に、蜂巣炎、敗血症等の感染症を合併した症例も報告されている〔8.5参照〕。
11.1.6. 皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)(0.1%未満)、中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)(頻度不明)、多形紅斑(0.1%未満):皮膚粘膜眼症候群、中毒性表皮壊死融解症、多形紅斑等の重篤な水疱性皮膚障害・重篤な剥脱性皮膚障害があらわれることがある。
11.1.7. 消化管穿孔(0.1%未満)、消化管潰瘍(0.4%)、消化管出血(0.3%):異常が認められた場合には、内視鏡、腹部X線、CT等の必要な検査を行い、本剤の投与を中止するなど、適切な処置を行うこと〔9.1.2、15.1.3参照〕。
11.1.8. 角膜穿孔(0.1%未満)、角膜潰瘍(0.1%未満):眼痛等の異常が認められた場合には本剤の投与を中止するなど、適切な処置を行うこと〔15.2.2参照〕。
- 11.2. その他の副作用*1). 皮膚:(5%以上)ざ瘡様皮疹等の発疹(61.6%)、皮膚乾燥・皮膚亀裂(9.3%)、爪囲炎等の爪障害(8.8%)、(1%以上5%未満)皮膚そう痒症、紅斑、(1%未満)皮膚剥脱、脱毛、皮膚潰瘍、皮下出血、皮膚色素沈着、皮膚血管炎(IgA血管炎等)、光線過敏症、(頻度不明)男性型多毛症[必要に応じて、皮膚科を受診するよう患者を指導すること]。
2). 眼:(1%以上5%未満)結膜炎、(1%未満)眼乾燥、角膜炎、眼瞼炎、睫毛異常/眉毛異常、眼そう痒症、角膜びらん、眼脂、霧視、流涙増加、ぶどう膜炎[眼の異常があらわれた場合には、直ちに眼科的検査を行い、適切な処置を行うこと]。
3). 肝臓:(1%以上5%未満)ビリルビン上昇、ALT上昇、AST上昇、(1%未満)Al-P上昇、LDH上昇、γ-GTP上昇。
4). 腎臓:(1%未満)クレアチニン上昇、BUN上昇、血尿、尿沈渣異常。
5). 血液:(1%以上5%未満)貧血、(1%未満)血小板減少、白血球増加、白血球減少、好中球減少、リンパ球減少、好中球増加、INR上昇。
6). 消化器:(5%以上)下痢(22.8%)、口内炎(9.6%)、食欲不振(7.0%)、(1%以上5%未満)悪心、嘔吐、口唇炎、腹痛、便秘、(1%未満)胃炎、口内乾燥、消化不良、腸炎、アミラーゼ増加、食道炎。
7). 呼吸器:(1%未満)鼻出血、呼吸困難、咳嗽、喀血、口腔咽頭痛。
8). 精神神経系:(1%以上5%未満)味覚異常、(1%未満)不眠症、頭痛、浮動性めまい、末梢性ニューロパチー、意識障害。
9). その他:(1%以上5%未満)感染症(皮膚感染、肺感染、上気道感染等)、倦怠感、発熱、疲労、(1%未満)電解質異常、体重減少、血中アルブミン減少、CRP上昇、浮腫、血圧上昇、筋肉痛、筋痙縮・筋痙攣、血糖値上昇、総蛋白減少、脱水、血栓・塞栓。
*)頻度はEGFR遺伝子変異陽性例の国内第2相臨床試験(一次化学療法)、国内第1相臨床試験、国内第1相継続試験及び国内第2相臨床試験(二次治療以降)、特定使用成績調査(全例調査)(二次治療以降)に基づき記載した。
- 高齢者
- 患者の状態を観察しながら慎重に投与すること(一般に生理機能が低下していることが多い)。
- 授乳婦
- 妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与し、妊婦又は妊娠している可能性のある女性にやむを得ず投与する場合は、本剤投与による胎児へのリスク、妊娠中断の危険性について患者に十分説明すること(妊婦における使用経験はない、また、動物実験では、流産(ウサギ)、胚致死及び生存胎仔数減少(ウサギ、ラット)が報告されており、また、胎仔中(ラット)に移行することが報告されている)〔9.4生殖能を有する者の項参照〕。
授乳しないことが望ましい(ヒトでの乳汁移行に関するデータはないが、動物実験(ラット)で乳汁中に移行することが報告されている)。
- 小児等
- 小児等を対象とした臨床試験は実施していない。
- 適用上の注意
- 14.1. 薬剤交付時の注意PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること(PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することがある)。
- その他の注意
- 15.1. 臨床使用に基づく情報15.1.1. 国内で実施した特定使用成績調査(全例調査)における多変量解析の結果、喫煙歴有、全身状態不良(ECOG Performance Status:2-4)、間質性肺疾患の合併又は既往、肺感染症の合併又は既往、肺気腫又は慢性閉塞性肺疾患の合併又は既往が間質性肺疾患発現・間質性肺疾患増悪の危険因子として検出された(2013年2月集計時)。また、間質性肺疾患が発現した患者集団を対象とした多変量解析の結果、全身状態不良(ECOG Performance Status:2-4)、正常肺占有率低値、蜂巣肺の併存が間質性肺疾患の予後不良因子(転帰死亡)として検出された(2015年9月集計時)〔1.2、8.3、9.1.1、11.1.1参照〕。
15.1.2. 海外において、EGFR遺伝子変異の有無を問わず実施した化学療法未治療の進行性非小細胞肺癌患者を対象とした2つの第3相臨床試験が実施され、プラチナ製剤を含む化学療法(ゲムシタビン/シスプラチン、及びパクリタキセル/カルボプラチン)と本剤の同時併用にて臨床的な有用性は示されなかったとの報告がある(外国人データ)〔7.3参照〕。
15.1.3. 海外において、NSAIDsとの併用時に胃腸出血が発現したとの報告がある(外国人データ)〔9.1.2、11.1.7参照〕。
15.2. 非臨床試験に基づく情報15.2.1. ヒト肝ミクロソーム及びヒト遺伝子組換え型のUGT1A1を用いた試験においてビリルビンのグルクロン酸抱合の阻害が認められていることから、Gilbert症候群等のグルクロン酸抱合異常又はUGT1A1発現量が低下している患者では、血清ビリルビン濃度上昇するおそれがある。また、イリノテカン塩酸塩水和物等の消失過程で主にUGT1A1によるグルクロン酸抱合を受ける薬物との相互作用の可能性がある〔10.相互作用の項参照〕。
15.2.2. イヌを用いた反復経口投与毒性試験において、高用量の50mg/kg/日群で角膜異常(角膜浮腫、角膜混濁、角膜潰瘍、角膜穿孔)が認められている〔11.1.8参照〕。
15.2.3. ラット又はイヌを用いた反復経口投与毒性試験において皮膚(毛包変性及び毛包炎症:ラット、発赤及び脱毛:イヌ)、肝臓(肝細胞壊死:ラット)、消化管(下痢:イヌ)、腎臓(腎乳頭壊死及び尿細管拡張:ラット及びイヌ)及び卵巣(卵巣萎縮:ラット)への影響が報告されている。
16.1 血中濃度
16.1.1 単回投与及び反復投与
固形癌患者15例にエルロチニブとして50、100又は150mg注1)を単回経口投与したときの、血漿中エルロチニブ濃度の推移を添付文書の図に示した。単回投与に引き続き3日目から23日目まで50、100又は150mg注1)を1日1回の用量で反復経口投与を実施した時の薬物動態パラメータを単回投与の結果と併せて表に示した。単回投与時の薬物動態パラメータから、エルロチニブの体内動態には線形性が認められた。
単回投与後の血漿中エルロチニブ濃度推移(平均値±標準偏差)
単回又は反復投与時のエルロチニブの薬物動態パラメータ
→図表を見る(PDF)
16.1.2 母集団薬物動態解析の成績
海外において591例の固形癌患者に本剤を投与したときの母集団薬物動態解析の結果では、クリアランスについて人種、体重、性別は影響を及ぼす因子ではなかった(外国人データ)。
16.2 吸収
16.2.1 バイオアベイラビリティ
健康成人18例に本剤を経口投与後のバイオアベイラビリティは約59%と推定された(外国人データ)。
16.2.2 食事の影響
健康成人20例にエルロチニブとして150mgを食後(高脂肪、高カロリー食)単回経口投与した時、空腹時投与に比べ、エルロチニブのAUCinfはほぼ2倍に増加した(外国人データ)。[7.2参照]
16.3 分布
エルロチニブは血漿中のアルブミン及びα1‐酸性糖蛋白と結合する。ヒトにおける血漿蛋白結合率は、3.8μg/mLの濃度において約95%であった。また、ワルファリン及びプロプラノロールの共存によっても結合率の変化は認められなかった(in vitro)。
エルロチニブの血球移行率の計算値は、ヘマトクリットが0.48の時34.2%であった(in vitro)。
白色系ラットにおける、14C‐エルロチニブ経口投与後の放射能は、各組織に比較的速やかに分布したが、脳への移行は少なかった。最高濃度到達後の組織中の放射能は速やかに消失し、投与後72時間ではほとんどの組織において定量限界以下となった。有色系ラットにおける14C‐エルロチニブ経口投与後の放射能分布は白色系ラットに類似したが、メラニン色素を含む組織(ブドウ膜系、有色皮膚)において放射能が高かった。
16.4 代謝
エルロチニブの代謝には主として肝臓中のCYP3A4が寄与することが示唆され、CYP1A2の関与も認められた(in vitro)。
エルロチニブの代謝経路は主に3経路であり、キナゾリン環側鎖のO‐脱メチル化とそれに続くカルボン酸への酸化、アセチレン側鎖の酸化とそれに続くアリルカルボン酸への加水分解、及びフェニルアセチレン部分の芳香族水酸化等が推定された(外国人データ)。主代謝経路のO‐脱メチル化による代謝物の体内動態はエルロチニブと類似し、その血漿中濃度はエルロチニブの10%以下で推移した(外国人データ)。[10.参照]
16.5 排泄
健康成人4人に14C‐エルロチニブ100mg注1)を単回経口投与後264時間(11日間)で、投与放射能のうち約91%が回収され、尿中に8%、糞中に83%の放射能が排泄された。また、尿及び糞中に排泄されたエルロチニブは投与量の2%未満であった(外国人データ)。
注1)承認された用法・用量は、エルロチニブとして150mgを1日1回である。
17.1 有効性及び安全性に関する試験
〈がん化学療法未治療の非小細胞肺癌〉
17.1.1 国内第II相試験
化学療法未治療のEGFR遺伝子変異(Exon19の欠失変異又はExon21のL858R変異)を有する進行又は再発の非小細胞肺癌を対象とした本剤単独療法の国内第II相臨床試験(JO22903)における有効性評価対象例102例の成績を次に示す。
国内第II相臨床試験(JO22903)成績
→図表を見る(PDF)
安全性評価対象例103例中103例(100%)に副作用が認められた。主な副作用は、発疹85例(82.5%)、下痢82例(79.6%)、皮膚乾燥79例(76.7%)、爪囲炎68例(66.0%)、そう痒症66例(64.1%)、口内炎64例(62.1%)等であった。
17.1.2 海外第III相試験
化学療法未治療のEGFR遺伝子変異(Exon19の欠失変異又はExon21のL858R変異)を有する進行又は再発の非小細胞肺癌を対象に本剤投与群と化学療法注4)群を比較した第III相臨床試験(ML20650)における有効性評価対象例153例の成績を次に示す(外国人データ)。
無作為化第III相臨床試験(ML20650)成績
→図表を見る(PDF)
注4)化学療法:シスプラチン+ドセタキセル又はシスプラチン+ゲムシタビン(シスプラチンをカルボプラチンへ変更しても良い。)
無増悪生存期間のKaplan‐Meier曲線
本剤投与群の安全性評価対象例75例中69例(92.0%)に副作用が認められた。主な副作用は、下痢43例(57.3%)、発疹37例(49.3%)等であった。
17.1.3 国際共同第Ib/III相試験(RELAY試験)
化学療法歴のないEGFR遺伝子変異(Exon19の欠失変異又はExon21のL858R変異)陽性の進行・再発の非小細胞肺癌患者449例(日本人症例211例を含む)を対象に、ラムシルマブ+本剤とプラセボ+本剤とを比較する無作為化二重盲検プラセボ対照試験(第III相パート)を実施した。ラムシルマブ10mg/kg又はプラセボ(2週間に1回)と本剤150mg(1日1回)を病態の悪化等が認められるまで投与を継続した。主要評価項目である無増悪生存期間において有意な延長を認めた。1年無増悪生存率はラムシルマブ+本剤投与群で71.9%(95%信頼区間65.1~77.6)、プラセボ+本剤投与群で50.7%(95%信頼区間43.7~57.3)であった。
国際共同第Ib/III相試験(RELAY試験)成績
→図表を見る(PDF)
無増悪生存期間のKaplan‐Meier曲線(RELAY試験)
本剤とラムシルマブが併用投与された221例(日本人症例105例を含む)において発現した主な有害事象は、感染症(80.5%)、下痢(70.1%)、高血圧(45.2%)、口内炎(41.6%)、蛋白尿(34.4%)等であった。[7.3参照]
〈がん化学療法施行後に増悪した非小細胞肺癌〉
17.1.4 国内第II相試験
少なくとも前化学療法1レジメンが無効であった非小細胞肺癌を対象とした本剤単独療法の国内第II相臨床試験(JO16565)における有効性評価対象例60例の成績を次に示す。
国内第II相臨床試験(JO16565)成績
→図表を見る(PDF)
安全性評価対象例62例中62例(100.0%)に副作用が認められた。主な副作用は、発疹61例(98.4%)、皮膚乾燥50例(80.6%)、下痢46例(74.2%)、そう痒症45例(72.6%)等であった。
17.1.5 国内第II相試験
少なくとも前化学療法1レジメンが無効であった非小細胞肺癌を対象とした本剤単独療法の国内第II相臨床試験(JO18396)における有効性評価対象例46例の成績を次に示す。
国内第II相臨床試験(JO18396)成績
→図表を見る(PDF)
安全性評価対象例46例中46例(100.0%)に副作用が認められた。主な副作用は、発疹45例(97.8%)、下痢31例(67.4%)、そう痒症30例(65.2%)、皮膚乾燥27例(58.7%)等であった。
17.1.6 海外第III相試験
少なくとも前化学療法1レジメンが無効であった非小細胞肺癌731例を対象に本剤投与群とプラセボ投与群を比較した無作為化二重盲検第III相臨床試験(BR.21)の成績を次に示す(外国人データ)。
無作為化二重盲検第III相臨床試験(BR.21)成績
→図表を見る(PDF)
EGFR蛋白発現状況に関する全生存期間の部分集団解析の結果は、EGFR蛋白発現陽性(本剤群117例、プラセボ群68例)HR=0.68(95%信頼区間;0.49-0.94)、EGFR蛋白発現陰性(本剤群93例、プラセボ群48例)HR=0.93(95%信頼区間;0.63-1.36)、EGFR蛋白発現不明(本剤群278例、プラセボ群127例)HR=0.77(95%信頼区間;0.61-0.98)であった。
本剤投与群の安全性評価対象例485例中481例(99%)に有害事象が認められた。主な有害事象は、ざ瘡様皮疹等の発疹366例(75%)、下痢261例(54%)、食欲不振、疲労各250例(52%)等であった。
18.1 作用機序
エルロチニブは上皮増殖因子受容体チロシンキナーゼ(EGFR‐TK)を選択的に阻害した。IC50は精製全長型EGFR‐TKに対し2nMであり、組換え型EGFR細胞内ドメインのチロシンキナーゼに対し1nMであった。一方、他のチロシンキナーゼ、c‐src及びv‐ablに対する阻害活性は全長型EGFR‐TKの1/1000以下であり、ヒトインスリン受容体及びI型インスリン様増殖因子受容体の細胞内ドメインのキナーゼに対する阻害活性は細胞内EGFR‐TKの1/10000以下であった。また、エルロチニブによる細胞周期のG1期停止及びアポトーシス誘導作用が確認された。
エルロチニブはEGFRチロシンリン酸化の阻害を介し、細胞増殖の抑制及びアポトーシスの誘導に基づき腫瘍増殖を抑制すると推察される。
18.2 抗腫瘍効果
In vitro系において、エルロチニブはヒト由来大腸癌細胞株DiFi及び頭頸部癌細胞株HN5の増殖を阻害した[DiFi細胞株でのIC50:100nM、HN5での100%阻害:250nM]。
ヒト由来頭頸部癌細胞株HN5、外陰部癌細胞株A431及び非小細胞肺癌細胞株(H460a、A549)を用いたヒト悪性腫瘍移植ヌードマウス系において、エルロチニブは腫瘍増殖抑制作用を示した。
- 一包可:不可
抗悪性腫瘍剤
- 分割:不可
- 粉砕:不明
抗悪性腫瘍剤
- 製造販売会社
- チェプラファーム
- 販売会社
おくすりのQ&A
自費で接種された、風疹ワクチンが申請により
補助が受けれることになり、母子手帳記載以外に、予診票の控えがいるとのこと
保管中の予診票の控えを渡したら...
わからないことがあったら、
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